睾丸が大きい!?うさぎの精巣腫大②「ライディッヒ細胞腫」
※本コラムでは手術時の画像があります。苦手な方は閲覧しないでください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。
概要
うさぎ(MIX 7歳6ヶ月齢 未去勢雄)が「精巣が腫大している。」とのことで来院しました。身体検査により右側の精巣の腫大を確認。腫瘍の可能性を考慮し精巣を摘出することとしました。術前検査としてX線検査、血液検査を行い大きな異常が認められなかったため、精巣を摘出、病理検査の結果、ライディッヒ細胞腫という悪性腫瘍でした。4日後の術創は問題なく、2週間後の再診でも問題ありませんでしたが、悪性腫瘍であるため経過観察が必要です。
精巣の腫大について
うさぎさんにおいても他の動物同様、精巣の異常が認められることがあります。うさぎさんの精巣は、陰茎のわきの体表に左右一つずつ存在しますが、抱っこに慣れていないうさぎさんの場合、飼い主さんが精巣を見ることが少なく異常が見過ごされていることがあります。 臨床症状を示すことも少なくないのも、異常に気付きにくい点としてあげられます。 うさぎの精巣腫大は高齢になると認められることが多い疾患です。精巣が腫大している場合、非腫瘍性のものと腫瘍性のものに大別され、精巣嚢胞は非腫瘍性に分類されます。残念ながら。外観からは見分けがつかないため、手術で摘出し検査します。
▲初診時のうさぎさんの外観です。伏せの体勢だと異常が全然わかりません
▲うさぎさんを仰向けにして精巣を確認しているところです。右側の精巣が左側に比べて大きくなっているのがよくわかります
▲麻酔後、手術直前の画像です。矢印が腫大した右側精巣です
▲摘出した精巣です。向かって左側に置いてあるのが腫大した右側精巣です
臨床診断は「精巣腫大」
病理診断は「ライディッヒ細胞腫」
麻酔からの覚醒も問題なく、手術当日退院としました。退院時には、抗生物質や鎮痛剤などの内服薬を処方し、4日後の診察では食欲元気も問題ありませんでした。さらに14日後に完全な傷のふさがりを確認して治療終了となりました。
摘出した精巣の検査結果は「ライディッヒ細胞腫」という悪性腫瘍でしたが、完全に切り取られているとの評価を得ました。
しかし、摘出した精巣は、悪性腫瘍であったため今後も経過観察が必要です。
▲治療終了時の画像です。
うさぎのライディッヒ細胞腫についてもっとくわしく!
うさぎの精巣腫大は高齢になると認められることが多い。この患者で認めたライディッヒ細胞腫は腫瘍性に分類され、精巣腫瘍では最も多いとされる。まれに悪性の挙動を示すため注意が必要である。
一般的には外観から飼い主が気づき来院されることが多いが、抱っこができないうさぎでは診察時に見つけられることもある。病理組織学的検査以外では診断がつかないことが多いため、精巣を摘出し検査することが多い。
原因
特になし
症状
症状はあまり示さないが、大きくなった陰嚢は排泄物で汚れ、皮膚炎などを起こすことがある。また、悪性腫瘍であるため転移を起こした場合は、転移先の臓器の障害が出ることがある
検査
身体検査、X線検査、超音波検査、CT検査など
治療
精巣摘出術
予防
早期の精巣摘出術(去勢手術)
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。