腰が立たない!うさぎの後躯麻痺

※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

3ヶ月齢のうさぎさんが、後ろ足の麻痺を主訴に来院しました。ペットショップで爪切りをして、帰宅した後に後ろ足の麻痺に気づいたそうです。原因は定かではありませんが、来院時は後ろ足に力が入らず、立つことができませんでした。レントゲン検査では明らかない異常は認めず、安静入院、注射治療で良くなり、退院、内服治療としました。その後は、経過もよく歩けるようになりました。

後躯麻痺(後ろ足の麻痺)について

後躯麻痺は様々な動物で起こり、原因も様々です。一般的には、神経の異常や腫瘍、骨折などが考えられます。治療はその原因によって異なるため、しっかり診断をつけることが大切です。

うさぎの後躯麻痺は事故による骨折がほとんどで、まれに背骨の腫瘍などで神経の障害を起こすことがあります。事故の原因は様々で、爪切りなどの時に激しいキックをすることで発生したり、何かに驚いたときに突発的に走ろうとして折れるなんてこともあります。そのため、事故によるものの多くは腰椎の骨折です。骨折が疑わしい場合は、レントゲン検査やCT検査で確認します。腰椎の骨折の場合は整復が困難であるため、安静と内科治療が選択されます。

▲立つことができず、後ろ足を引きずっています。両側性の後躯麻痺ですが、前あしは正常に動いています。痛みの感覚はありましたが、自分の意思で排尿しているかはわかりませんでした。毛並みはよく、本人の元気はあります。

▲レントゲン画像上、明らかな骨格的異常(骨が折れている、溶けている、など)は認められませんでした。強いて言えば、第9-10胸椎間が少しずれているかもしれません。レントゲン検査では神経系の異常は評価できません。

臨床診断は「脊髄疾患」

このうさぎさんでは、既往と症状から脊椎の骨折を疑い慎重にレントゲンを撮りましたが、明らかな骨格的異常は認められませんでした。もしかしたら、CTを撮ることでレントゲンではわからない微細な骨折はわかったかもしれません。また、MRIをすれば神経の異常がわかることもあります。

脊髄の損傷の可能性が高いことから、内科治療をしていくことになりました。

神経疾患の場合は、初期の治療が重要であると考えられ、安静と注射治療がメインになります。

このうさぎさんは、入院管理で安静とし、注射治療を行いました。入院から数日は圧迫排尿していましたが、その後自分での排尿を認めました。3日後には起立できるようになり、6日後に退院となりました。退院後は自宅での安静と内服治療となります。

▲初診から2週間後の動画です。ほぼ問題なく生活できるレベルまで治癒しました。もちろん、元気や食欲は問題ありません。その後、リハビリをスタートしました。

初診から5週間後の動画です。元気に動き回っています。正常に戻ったため、治療終了としました。

うさぎの後躯麻痺について

うさぎは脚力が非常に強いものの、その骨は弱く、自分の力で骨折してしまうことがある動物です。後躯麻痺のうさぎの場合、可能性がもっとも高いのは背骨の骨折による脊髄の損傷です。レントゲンではわからないレベルのほとんどずれていないことから、脊椎が大きくずれ、脊髄も分断されている可能性が高いこともあります。

症状

神経の障害の程度により痛みだけのこともあれば、麻痺を起こし歩けなくなることもあります。また、障害が重度になってくると排尿に携わる神経も障害され、排尿困難が生じたり、痛みを感じる感覚も障害されることもあります。また、炎症が障害部位から頭側の神経に波及していくと突然亡くなることもあります。

診断

レントゲン検査、血液検査、CT検査、MRI検査など

予防

抱っこや、人との触れ合いに慣れさせる。床にカーペットなどを敷き滑らないようにする

治療

安静、内科治療、時に外科治療

※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。
※伴侶動物の症状、状態には個体差がございます。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。

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