血尿!?うさぎの子宮内膜過形成

※本コラムでは手術時の画像があります。苦手な方は閲覧しないでください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

うさぎ(ネザーランドドワーフ 5歳1ヶ月齢 未避妊雌)が「2日前から血尿をしている。」とのことで来院されました。X線検査の結果、子宮が明瞭に映っており子宮疾患による出血が疑われました。血液検査の結果、貧血などの大きな異常が見られなかったため、手術により子宮と卵巣を摘出。検査の結果、子宮内膜の過形成でした。術後は血尿もなく元気に過ごしています。

雌うさぎの血尿について

うさぎは正常でも赤いおしっこをすることがあるので、犬や猫のように赤い尿=血尿とは限りません。見た目では血尿かどうかわからないことが多いので尿検査が必要になります。では、検査の結果、血尿であった場合や明らかな出血であった場合は何が考えられるのでしょう?その場合、膀胱炎などの尿路からの出血か子宮などの雌性生殖器からの出血(こちらは正確には血「尿」ではない)の可能性が高いです。そこから先は、X線検査や超音波検査、CT検査などにより診断を進めていくことになります。

▲来院時のキャリー内のペットシーツ。これだけ濃い赤色の場合、出血の可能性が高いですね

▲X線検査画像。青矢印は膀胱ですが、明らかな結石は見つかりません。赤矢印は子宮で、明瞭に映っています

▲手術時の画像です。赤矢印は子宮です。正常よりも充血し赤みが増しています。黄矢印が頭側です

▲手術時の画像です。念のため、膀胱も確認しておきます。矢印が膀胱です。明らかな異常が見られませんでした。

臨床診断は「子宮疾患による陰部からの出血」
病理診断は「子宮内膜過形成」

麻酔からの覚醒も問題なく、手術翌日には退院となりました。
退院時には、抗生物質や鎮痛剤などの内服薬を処方し、6日後の診察では体調は問題なく血尿も見られませんでした。さらに7日後に抜糸をして治療終了となりました。摘出した子宮の検査結果は内膜の過形成で、摘出してしまえば予後は良好です。このうさぎさんも、その後出血は認められません。

▲元気になって治療終了です!

うさぎの子宮疾患についてもっとくわしく!

うさぎの子宮疾患は高齢になるほど発生しやすくなります。子宮内膜過形成のように非腫瘍性疾患は比較的若齢でも発生し、年齢が増すごとに腫瘍性疾患の割合が多くなります。非腫瘍性疾患の中では過形成が最も多く、腫瘍性疾患の中では子宮腺癌が最も多い。症状として陰部からの出血が最も多く70%以上の罹患うさぎで認められ、重度の場合は貧血や失血死に至ります

原因

性ホルモンの影響が考えられる

症状

陰部からの出血(血尿)、元気消沈、食欲不振など。がん細胞が肺に転移していると呼吸困難を呈す

検査

腹部触診、尿検査、血液検査、X線検査、超音波検査、CT検査など

治療

第一選択肢は子宮卵巣摘出術。摘出困難な場合は抗がん剤など

予防

早期の子宮卵巣摘出術(避妊手術)

※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。

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