足にできもの!インコの皮膚腫瘍②セキセイインコの「扁平上皮癌」
※手術画像があります。血液などが写ることがありますから苦手な方は閲覧しないでください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。
概要
セキセイインコ(7才10か月齢)が、「脚の出来物が大きくなってきた」ということで来院されました。右脚大腿部外側に1㎝ほどの皮膚腫瘤が認められ、電気メスで腫瘤の切除を行いました。切除した腫瘤を病理検査に提出した結果、扁平上皮癌でした。その後皮膚は問題なく、再発も認められていません。
皮膚腫瘤について
皮膚腫瘤は高齢の鳥にできやすい疾患です。多くの場合、腫瘤に針を刺して取れた細胞を調べる針生検をしたり、腫瘤を切除・摘出して病理組織検査をしなければ、それがなんなのか見た目だけでは分かりません。皮膚腫瘤は腫瘍と非腫瘍性(炎症や感染)のものに分かれ、炎症や感染の治療であれば内服で治ることもありますが、腫瘍の場合は摘出が基本です。特に悪性の腫瘍の場合は組織の浸潤性(がん細胞が周りの組織を壊しながら拡大していくこと)が強かったり、他の臓器への転移が見られる場合があるので早期の摘出が重要です。良性の腫瘍であっても腫瘍のせいで動きづらかったり、こすれて出血を繰り返すことで日常生活に支障をきたすようなら切除することをおすすめします。
▲初診時の画像。右脚の大腿部に腫瘤が見えます(赤矢印)。表面は血が固まってカサブタになっています
▲腫瘤摘出時の様子。腫瘤の根元を電気メスで少しずつ切除しています
▲摘出した腫瘤。表面がボコボコとしたラズベリー状の腫瘤です
臨床診断は「皮膚腫瘤」
病理診断は「扁平上皮癌」
▲術後の写真。手術から1週間後の皮膚の様子です。傷跡はほとんど目立たなくなりました。病理組織検査では、腫瘍は完全に取り切れていました
セキセイインコの皮膚の扁平上皮癌について
皮膚や粘膜を構成する扁平上皮細胞が腫瘍化すると扁平上皮癌になります。扁平上皮癌は鳥類だけでなく、他の動物でも比較的多い悪性腫瘍です。犬猫同様、鳥も皮膚腫瘍の治療の第一選択肢は切除です。犬猫において扁平上皮癌は浸潤性が強く、転移は少ない腫瘍と言われていますが、鳥ではよく分かっていません。早い段階で切除出来れば、比較的予後は良好な可能性が高いですが、悪性の腫瘍なので切除後も経過観察が必要です。
原因
よく分かっていません
症状
皮膚や粘膜の一部に腫瘤が形成されることで、こすれて出血したり、気にしてかじることがあります。また、そこから感染や痛みが生じると食欲元気がなくなることもあります
検査
針生検、腫瘍の切除・生検、超音波検査、X線検査、CTなど
治療
第一選択肢は外科切除です。犬猫では抗がん剤や放射線治療も実施されることがありますが、小型鳥の場合は難しいことがほとんどです
予防
特にありません
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。