後ろ足を浮かせて歩いている…。ハムスターの骨折(整復手術)

※手術画像があります。血液などが写ることがありますから苦手な方は閲覧しないでください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

ゴールデンハムスター(1歳10ヶ月齢)が、「前夜から右後ろ足を浮かせて歩いている。」とのことで来院されました。明らかな原因は思い当たりませんでした。本人は食欲元気があり動き回っていますが、右後ろ足には体重をかけられません。レントゲン検査の結果、骨折と診断。高齢であったため麻酔のリスクはありましたが、飼い主様の希望により手術による整復となりました。手術は問題なく終了し、骨折部は概ね良好な経過をたどり、非常に良好で元気に過ごしています。

ハムスターの骨折について

ハムスターの骨折は時々見られますが、事故によるものが多くを占めます。最近では複雑なケージがハムスター用として販売されていますが、注意が必要なものもあります。複雑なケージも悪いことばかりではなく、運動量が増したり本人のQOLの上昇に寄与することもあります。その子に合っているかが重要です。ケージ内のどこかに挟まったり、壁を伝って天井から落ちたりとケージ内で起こる事故もあれば、部屋に出しているときに知らずに踏んでしまったり、扉に挟んでしまったりなどケージ外で起こる事故もあります。

▲初診時の動画
後ろ足を浮かせて歩いているのがわかります。触診してみたところ、軽度の内出血と腫れが認められましたが、骨が折れてガシャガシャした感じはありませんでした。この時点ではまだ骨折と断定はできません。触診だけではなくレントゲン検査を行い、診断を進めていきます。

▲レントゲン画像
右足の大腿骨(太ももの骨)が折れていることがわかります。

▲手術直前の麻酔下の画像になります
大腿部分で内出血と腫れが確認されます。

骨がくっつく条件というのがいくつかあり、それをクリアしなくてはなりません。
簡単に言うと
①骨が折れてからあまり時間がたっていない
②折れている部分が近くになくてはならない
③折れている部分がグラグラ動いてはならない

これらの条件をクリアするのに、一番適しているのはやはり外科手術による固定です。ハムスターくらい小型の動物になると犬や猫のように金属プレートを当てて強固に固定することは困難なので、骨を貫通するように金属のピンを入れて固定します。

このハムスターの飼い主様は外科的整復を希望されたので、手術となりました。

高齢だったので麻酔が心配でしたが、麻酔は終始安定していました。折れた部位が大腿骨であったため、股関節まで貫通しないようにピンを挿入しなくてはいけません。大腿骨が縦に割れていたためピンがしっかり固定されにくく、糸で骨をしばって補強することで安定させました。麻酔からの醒めも問題なく、手術は無事終わりました。本人もよく頑張ってくれたと思います。

▲手術直後のレントゲン画像
大腿骨に入っているのが医療用の金属ピンです。このピンがあることにより、折れている部分が動かず、骨の修復が進みます。

臨床診断は「右大腿骨骨折」

術後翌日には元気食欲もあり、退院としました。退院時に、抗生剤や鎮痛剤などを処方しました。
術後3日目の手術部位の確認ではすでに自分で糸を取ってしまっていましたが、傷の裂開は認められなかったのでそのまま経過を見ることになりました。
術後16日後に一度レントゲンを撮って状態を確認しましたが、骨がくっつく反応がまだ弱かったので、もうしばらく様子を見ることにしました。術後27日には骨がしっかりとくっついていることが確認できたため、ピンを抜く処置を行いました。

抜ピン直前の画像です。足の腫れもなく、傷口もなく良好です。

抜ピン後の動画です。すごく早く動くので動画撮影が困難でした。

ハムスターの骨折について

ハムスターの骨折は年齢を問わず見られ、事故によるものが多くを占めます。その中でも脚の骨折が多く認められます。ほかの動物同様、骨折治療の第一選択肢は手術による整復ですが、体が小さいこともあり困難な場合もあります。治療の第2選択肢はバンテージ処置になりますが、かじってボロボロにしてしまい、数時間でダメになることもあります。

症状

足が動かない。体重をかけられない。足がブラブラしている。など。

予防

事故にならないようなその子に合ったケージの選択。部屋に出しているときは目を離さない。

治療

脚が温存できそうなら骨折整復術やバンテージ処置。難しい場合は断脚術。

※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。

ハムスターの診療

ハムスターの骨折について

ハムスターは、この記事でご説明しましたように、事故によって骨折することがあります。けがをしないよう、その子にあったケージを選んであげてください。また、骨折したときにその骨がくっつくかどうかは、時間も非常に重要ですので、歩き方に異常が見られた時などは速やかに動物病院に連れていきましょう。

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