健康診断で早期発見!ハムスターの寄生虫感染症①「蟯虫感染」

※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

今回は、ジャンガリアンハムスター(5ヶ月齢)の患者さんと、ジャンガリアンハムスター(3ヶ月齢)の患者さん、2名をご紹介させていただきます。お二人とも、来院した理由(主訴)は別件だったのですが、健康診断として糞便検査をしたところ、蟯虫(ぎょうちゅう)の卵が見つかりました。蟯虫の病原性は低いとされますが、まれに重度感染を起こすと腸閉塞や腸炎を引き起こしてしまうこともあるので注意が必要です。

それでは今回の患者さんの診察です。

ハムスターの状態を確認

ケースA(ジャンガリアンハムスター 5か月齢)

▲外観写真 - 外見に変化はなく、毛並みもよいです。

▲顕微鏡画像 - ラグビーボール状の虫卵が観察されました。もちろん、虫卵は肉眼では見えません。

ケースB(ジャンガリアンハムスター 3ヶ月齢)

▲外観写真 - 外見に変化はなく、毛並みもよいです。

▲糞便外観 - 外観上、異状は感じません。

▲顕微鏡画像 - ラグビーボール状の虫卵が観察されました。もちろん、虫卵は肉眼では見えません。

(二人とも)臨床診断は「蟯虫感染」

ケースAのジャンガリアンハムスターは投薬の結果、2週間後と1か月後の再検査で検出されなかったため、治療は終了としました。

ケースBのジャンガリアンハムスターは投薬開始から10日後に突然亡くなりました。飼い主様のご協力により剖検(ご遺体の病理学的な検査を行い、その死因を特定するための検査です。)を行いまして、「死因は蟯虫感染による腸炎などが疑わしい。」という結果でした。私自身蟯虫感染での死亡例は初めてで非常にまれなケースではありますが、注意が必要であると感じました。

ハムスターの蟯虫感染について

ときどき認められる消化管寄生虫で、一般的には「盲腸蟯虫」と「大腸蟯虫」がいます。これらを病院で見分けることは困難であり、また、見分けても治療の方法に差異はありません。消化管内に成虫がおり、産卵した虫卵を糞便検査で検出します。適切な駆虫薬の投与により駆虫できることが多い疾患です。

環境中に普通に存在する寄生虫ではないため、感染源はファームや親などからの感染であると思われます。そのため、飼い始めの時期に健康診断として糞便検査をしっかり行うことは重要です(一度の検査で見つからないこともあるため、疑わしければ何度か検査することをお勧めします)。

症状

あまり病原性は無く、基本的に無症状です。重度寄生の場合、腸炎など消化管トラブルが発生することがあります。

診断

糞便検査による虫卵の確認

治療

駆虫薬の投与

※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。
※特に今回掲載したケースBのハムスターちゃんの飼い主様はつらいお気持ちであったと思われます。そのような中、「他のハムちゃんのためになるなら。」とのことで、剖検のみならずHPへの掲載もお許しいただきまして、感謝申し上げます。また、亡くなってしまったハムスターちゃんのご冥福をお祈りします。飼い主様のご希望に応えらえるようスタッフ一同尽力いたします。

ハムスターの診療

ハムスターの治療について

「エキゾチック診療」という専門誌でハムスターについて誌上発表を行っております。また、ハムスターの診療実績が多数あり、安心してご相談いただけるかと思います。ハムスターは犬や猫と比較すると寿命が短い動物ではありますが、愛情を持って一緒に暮らす飼い主様のためにも、全力で治療にあたらせていただきます。今回の蟯虫検査のように、健康診断で判明する症状もありますし、「少しおかしいな」と思ったら実は歯が伸びすぎていて顎に刺さって出血している、といったケースもございます。日常ケアと一緒に様子を見させていただければ幸いです。ハムスターの入院に対応する設備もございます。

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