猫のお尻から出血?嚢胞性子宮内膜過形成

※手術画像があります。血液などが写ることがありますから苦手な方は閲覧しないでください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

猫(15歳、未避妊雌)が、「お尻からの出血」を主訴に来院されました。見ると陰部から出血していましたが、尿検査で検査した結果血尿はありませんでした。腹部のX線検査、超音波検査にて子宮が拡張していることが確認されたので、子宮からの出血を疑い、子宮卵巣摘出術を行いました。麻酔からの醒めは良好で、入院下で静脈点滴と抗生剤、止血剤の注射による治療を続け、数日後食欲元気が戻ったので退院しました。病理組織検査結果は悪性腫瘍ではなく、嚢胞性子宮内膜過形成、子宮内膜ポリープでした。治療を終了した後も元気に過ごしています。

猫の子宮疾患について

猫は交尾が行われないと排卵がされないため、子宮内の妊娠できる環境が保たれにくく、犬よりも子宮疾患にかかりにくいとされています。しかし中には自然排卵する猫もおり、交尾の有無に関係なく発症することもあります。治療の第一選択としては卵巣・子宮摘出術ですが、手術が困難な症例や、病状によってはホルモン剤の投与で治療することもあります。

▲初診時の画像。陰部から出血している様子が分かります

▲X線画像です。子宮の陰影が確認できます(黄色矢頭)。正常な子宮はX線検査では確認できませんが、拡張している場合、X線検査でも映ってきます。
子宮疾患の場合、出血により貧血が進むこともあるので、その日のうちに手術をすることになりました。

▲手術時の写真。全体的に子宮が厚くなり、中にはわずかに液体を伴っていました。麻酔からの醒めも問題なく、手術は無事終わりました。術後3日目には退院し、子宮と卵巣は病理検査に出しました。

臨床診断は「子宮疾患による出血」
病理診断は「嚢胞性子宮内膜過形成、子宮内膜ポリープ」

術後2週間で抜糸をしました。陰部からの出血はなく、いたって元気でした。

嚢胞性子宮内膜過形成について

雌性ホルモンであるプロジェステロンが過剰に分泌することで子宮内膜を刺激し、子宮内に液体がたまる疾患です。単独では症状を示さないこともありますが、続発性の細菌性子宮内膜炎、子宮蓄膿症、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症を伴うこともあります。今回のように子宮からの出血の場合、出血が続くと貧血になってしまうこともあるので、早めに治療する必要があります。

原因

雌性ホルモンの子宮への刺激

症状

陰部からの出血や排膿が一般的ですが、そういった症状が見られないこともあります。また、元気消失や食欲の低下、発熱、多飲多尿、お腹の張りが見られることもあります

検査

X線検査、超音波検査、血液検査など

治療

第一選択は子宮卵巣の外科的摘出。手術が困難な症例ではホルモン剤の投与を行うこともあります

予防

早期の避妊手術

※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。

猫の診療

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