電動ソファーに尾が巻き込まれて…!猫の断尾
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。
概要
猫(2歳9ヶ月齢)が、「尻尾を電動ソファーに巻き込まれて、皮がめくれている。」とのことで来院されました。X線検査により、尾椎の骨折および脱臼が認められ、固定で経過を見ることにしました。しかし、2週間後には尾の中間部からミイラ化が始まり、結果断尾手術をすることになりました。断尾手術後は体調も問題なく術後2週間で抜糸し、経過観察となりました。
電動ソファーの巻き込み事故について
猫には、狭いところの方が安心できるため、そういった場所を好む習性があります。今回の猫ちゃんも、おそらく足元から電動ソファー内に入り込みくつろいでいたら突然動き出した電動ソファーに巻き込まれてしまったのだと思われます。近年、電動ソファーの使用によりこのような事故によって受診される猫ちゃんを数匹経験しています。猫ちゃんを飼われているご家庭では、電動ソファーを動かす前に内部に猫が入り込んでいないか確認したほうがよいでしょう。
▲毛刈り後の外観写真です。ところどころ皮膚がめくれています。痛みが強いため、そっと触って毛刈り消毒します
▲X線画像です。骨折と脱臼が認められました。黄矢印が頭側。赤矢印が骨折部位。青矢印が脱臼部位です。
▲毛刈り、洗浄、消毒後に添え木をしてテーピングをしました。
▲2週間後の画像です。尾の途中から極端に細くなり、固くなっています(ミイラ化)。
このようになってしまっては正常な組織に戻ることはありません。今後のQOL(生活の質)のため断尾手術となりました。
臨床診断は「血流障害、虚血性変化によるミイラ化」
▲切除直前の画像です。尾の先端は滅菌されているシートで包みます。正常な組織の部分で切断し、先端を縫合します。
▲切除後の画像です。尾は短くなりましたが、10cmくらいは残すことができました。
▲術後2週間後の画像です。傷はすっかり癒え、抜糸をして治療終了です。
▲体調も問題なく元気です。短くなった尾を気にすることもありません。
尻尾のトラブルからの断尾についてもっとくわしく!
人では退化し無くなってしまった尾のトラブルは、動物の場合度々あります。ドアに尻尾を挟んでしまったり、ストーブの上から尾を垂らしていて火傷するなどの事故や腫瘍ができてしまうこともあります。また、動物種によっては、何かしらの理由により尾を気にするようになり、自ら咬み続けてしまいトラブルになることもあります(自咬症)。正常な組織に戻すことができない場合やQOL(生活の質)の低下を招く場合は断尾手術となることもあります。
原因
重度の炎症、様々な事故、腫瘍、自咬症など
症状
尻尾が動かない、尻尾を気にする、かじるなど
治療
状況によっては断尾手術
予防
事故の予防(扉が閉まり切らないようにする、ストーブの上に乗れないようするなど)
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。