陰茎が出っぱなし!フクロモモンガの陰茎脱

※手術画像があります。血液などが写ることがありますから苦手な方は閲覧をお控えください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

フクロモモンガ(雄、1歳)が「お尻から陰茎が出ている」とのことで来院しました。総排泄腔(便や尿が出るところ)から陰茎が出ており、本人が気にして引っ張り出してかじってしまい、先端は壊死していました。これ以上かじらないようにエリザベスカラーを装着し、陰茎を整復しましたが再脱出を繰り返したため、壊死した部分を切除する手術を行いました。同時に性的ストレスによる陰茎の引っ張り出しを抑制するために去勢手術も行いました。手術後、再発はありません。

フクロモモンガの陰茎脱

雄のフクロモモンガではよく見られる疾患です。栄養の過不足や性的なストレスが原因となることが多いです。陰茎先端の血色が悪くなければ総排泄腔内に押し戻すことでそのまま治まります。しかし、押し戻しても出てきたり、自分で引っ張り出してかじることで感染や壊死のリスクが高まる場合、陰茎先端の切除手術が必要です。

▲来院時の様子。元気はありましたが、食欲がありません。

▲先に去勢手術から行いました。陰嚢を切開して精巣を摘出しました(消毒後なので術野が消毒液で茶色になっています)

▲次に陰茎先端を切除していきます(矢頭)。フクロモモンガの陰茎の先端は二股に分かれており、この患者は自分でかじったことで両先端とも壊死して乾燥しています。手術では根元の尿道口まで切除しないように、確認しながら切除します

▲陰嚢と陰茎先端を切除しました。残った陰茎は総排泄腔に押し戻しました

臨床診断は「陰茎脱」

▲術後1週間の写真。気にして陰茎をかじることはなく、再発はありません

フクロモモンガの陰茎脱についてもっと詳しく!

陰茎脱が長期間にわたる場合、気にしてかじることでそこから感染、壊死が起こることがあります。感染や壊死が尿道口まで及ぶと排尿障害を引き起こし、命に関わることもあるため、早めの受診が重要です。また、陰茎脱が治まってもかじる行為が続く場合、生涯にわたってエリザベスカラーの装着が必要になることがあります。

原因

栄養の過不足や性的なストレス、尿路疾患、肛門腺の分泌物の蓄積などで陰部を気にすることで発生します

症状

陰茎が脱出することで本人が気にしてかじります。中には痛みから鳴きながらかじる患者もいます。かじることで感染や壊死が生じ、組織の損傷や出血、排尿障害が起こることで命に関わることもあります

検査

視診、触診で陰茎の脱出を確認します

治療

脱出している陰茎が短くピンク色で、気にしてかじる行動や引っ張る様子がなければ押し戻して治まることがあります。陰茎の色が悪く、炎症や壊死、乾燥が見られたり、かじる傾向がある場合エリザベスカラーの装着と、麻酔下での陰茎先端の切除手術を行います。性的ストレスを疑う場合、同時に去勢手術を行うことがあります

予防

栄養の過不足がないように、フクロモモンガ用のペレットを与えましょう。フルーツなどの甘い食べ物ばかりだと栄養的に偏り、血行不良から陰茎脱を疑われたフクロモモンガもいます

※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

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