急な食欲不振と下痢!フェレットの誤飲事故

※手術画像があります。血液などが写ることがありますから苦手な方は閲覧しないでください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

フェレット(2歳)が元気と食欲の低下および下痢で来院されました。問診の結果、「よく布製のものをかじっている」とのこと。レントゲン検査では胃腸に不自然なガスだまりがあり、腸に詰まっている可能性が考えられました。腸に穴が開いてしまう可能性を考え、緊急性が高いと判断し、早急な処置が必要と思われたので、その日のうちに開腹手術をしました。お腹を開けると腸管内に異物があり、それを胃の方へ押し戻して胃を切開して取り出すと、布の塊でした。数日の入院治療で元気食欲が回復したので退院とし、再診時体調は問題なかったので、抜糸をして治療終了としました。

誤食について…

誤食は多くの動物で見られます。特にフェレットは誤食が多く、若齢で好発します。もともと好奇心が旺盛な動物なので、いろいろなものをかじることが多く、そのまま飲み込んでしまう事故が起きやすいのです。犬猫では異物が胃内にとどまっている場合、吐かせる処置を行ったり、内視鏡で取り除くこともありますが、フェレットでは内視鏡による異物摘出は困難な場合が多く、吐かせる処置で吐かなければ開腹手術をします。グルーミングによる毛球なども消化管に詰まる原因です。異物が詰まってしまうと命に関わることもあり、早急な手術が必要になります。

▲初診時の画像。元気がなく動きがありません。

▲レントゲン検査では胃と小腸にガスがたまっているのが分かります(青矢印)。

▲腸の一部が膨らんでいます(オレンジ矢印)。
腸管の粘膜の色は悪くなく、壊死はしていませんでした。

▲腸管の物体を胃まで送り、胃を切開したところ、中から塊状のものが出せました。

▲中から摘出した物体は、布の切れ端の塊でした。

臨床診断は「異物による腸閉塞」

その後数日の入院で食欲はみるみる回復しました。胃腸薬と抗生剤を家で飲ませてもらい、退院10日後に抜糸をしました。飼い主には今後誤食に気を付けてもらい、退院して様子を見てもらうことにしました。

フェレットの腸閉塞について

腸閉塞とは食べたものが腸で詰まることで起こります。異物が腸に詰まると食欲元気がなくなり、激しい嘔吐、下痢などの症状を起こします。進行すると腸が壊死することもあり、命に関わります。急に元気や食欲がなくなったり、かじり癖のある個体で嘔吐や下痢が見られた場合は誤食を疑って早い段階で病院にかかりましょう。また、普段から噛んだり飲み込めそうなものを近くに置かないことも大切です。

原因

誤食誤飲。ドライパパイヤのようなおやつも詰まることがあるので注意が必要です

症状

食欲不振、嘔吐、下痢、歯ぎしり、沈鬱、腹部膨満、腹痛など

検査

血液検査、レントゲン検査、超音波検査、消化管造影検査、CT検査など

治療

胃内にとどまっている場合は吐かせる処置、内視鏡による摘出(フェレットの場合は困難なこともある)。消化管に詰まっている場合は開腹手術

予防

かじり癖のあるフェレットの生活空間にかじったり飲み込んだりしそうなものを置かないようにします。フェレットはグニグニしたゴムの食感を好む個体が多いです。そのためゴム製のものは誤って飲み込まないように普段から気を付けましょう。毛玉を飲み込まないようブラッシングやシャンプー、ケージの掃除も欠かせません。おやつのドライパパイヤは毛玉ケアと称して売られているものがありますが、肉食のフェレットの消化管内では消化されず、詰まる原因になりますので、なるべく与えないのが無難です。

※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。

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