頬が腫れて膿が出ている!チンチラの歯根膿瘍
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。
概要
7か月齢のチンチラが、「眼が腫れている」という主訴で来院しました。左眼の下まぶたから頬にかけて腫れており、白い膿が出ていました。口腔内の観察により奥歯に不整をみとめ、それが原因で左頬から膿が出ていました。まぶたの内側から膿が出ていたため点眼薬を処方、加えて内服薬による治療を行い、1か月後には腫れと膿の排出は無くなりました。その後は定期的な歯のチェックが必要となります。
チンチラの不整咬合 について
不整咬合とは、歯が異常に伸びて、咬み合わせが悪くなった状態のことです。チンチラは、生涯奥歯も前歯も伸び続ける動物で、本来の食性とは異なるものを食べ続けたり、金属やケージの柵をかじったりすることで不整咬合になってしまうことが多いです。 検査はX線検査での歯並びの確認や、口腔内のチェックです。奥歯の一部は見えない場合があるので、麻酔をかけて確認することもあります。治療方法としては、麻酔をかけずに医療用のニッパーで歯をカットする方法や、麻酔をかけて歯を削る方法が挙げられます。
来院時の様子です。右眼は問題ありません
左眼の下が腫れており、膿が出て眼が開かない様子です(矢印が眼です)
右眼下まぶたに比べ、明らかに左眼下まぶたが腫れているのが分かります
下まぶたから頬にかけて膿瘍(膿の袋)が確認されたため、圧迫により、下まぶたの内側から膿をできるだけ排出しました。不整咬合による歯根膿瘍を疑い、口腔内を観察し、奥歯の過長を発見しました。そのため、ニッパーを用いて伸びた歯をカットしました。瞼の内側から膿が出ていたため抗生剤の点眼薬を処方し、同時に抗炎症剤、抗生剤の内服薬も処方しました。
臨床診断は「臼歯の歯根膿瘍」
治療10日後には腫れが徐々に収まってきました。
治療開始から1か月後の様子です。左頬の腫れは治まり、正常に眼が開くようになりました。この後は定期的な歯のチェックを行って再発を予防します。
チンチラの歯根膿瘍 について
歯根膿瘍は、臼歯のぐらつきや歯根方向への伸長が原因となって歯根部の組織に負担がかかり、細菌感染を引き起こした結果、頬や顎下にできる膿瘍のことです。抗炎症薬や抗生剤を使用する内科的治療や、麻酔下で膿瘍を摘出する外科的治療があります。摘出が難しい場合、膿瘍切開による排膿、洗浄を行います。歯根膿瘍は完治が困難なことが多く、治療は長期に及ぶため、原因の予防や早期の発見が重要です。
原因
不正咬合による歯根からの感染
症状
眼脂(眼やに)、流涙、食欲不振、歯ぎしり、流涎、口元を気にする、膿瘍破裂による悪臭など
検査
肉眼的な歯のチェック、X線検査、CT検査
治療
抗炎症薬や抗生剤の投薬といった内科的治療。麻酔下での膿瘍摘出、感染組織の洗浄や消毒といった外科的治療
予防
普段から牧草中心の食生活を心がけ、ケージの柵などの噛み切れないものをかじらせないようにする
文責:金谷麻里杏 獣医師
監修:清野伸隆 獣医師 院長
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。