猫の慢性腎臓病…獣医師がその症状・原因・治療法を詳しく解説

猫の慢性腎臓病とは

猫の慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎臓の機能が長期間にわたって徐々に低下していく進行性の疾患です。高齢猫において最も多く見られる疾患の一つで、7歳以上の猫の約30-40%、15歳以上では約80%が罹患するとされています。札幌のような寒冷地では、冬季の水分摂取量減少により症状が悪化しやすい傾向があるため、特に注意深い観察が必要です。慢性腎臓病は一度進行すると元に戻ることはありませんが、早期発見と適切な治療により進行を遅らせ、猫の生活の質を大幅に改善することが可能です。

慢性腎臓病の主な症状

初期症状(ステージ1-2)

最も早期に現れる症状として多飲多尿があります。「いつもより水をよく飲むな」「トイレの回数が増えたかも」と感じたら、それは愛猫からの大切なサインかもしれません。これは腎臓の尿濃縮能力が低下することで起こり、普段より多くの水を飲み、薄い尿を大量に排泄するようになります。

また、食欲の軽度な低下や活動性の減少、毛艶の悪化なども初期症状として現れることがあります。「年のせいかな」と思われがちな変化ですが、定期的な血液検査により早期発見が可能です。愛猫の小さな変化を見逃さない観察力が、何より大切なのです。

進行期症状(ステージ3-4)

慢性腎臓病が進行すると、より深刻な症状が現れます。食欲不振が顕著になり、体重減少が進行します。嘔吐や下痢などの消化器症状も頻繁に見られるようになり、口臭(尿毒症臭)が強くなります。さらに進行すると、尿毒症により意識レベルの低下、痙攣、昏睡状態に陥る可能性があります。

札幌地域の猫では、冬季の寒さにより活動量が減少し、これらの症状に気づくのが遅れる場合があります。「寒いから動かないだけ」と思わず、室内温度の管理と併せて猫の行動変化を注意深く観察することが重要です。

慢性腎臓病の原因と病期分類

主な原因

猫の慢性腎臓病の原因は多岐にわたりますが、最も多いのは加齢による腎機能の自然な低下です。その他の原因として、遺伝的要因、慢性的な脱水、高血圧、糖尿病、腎盂腎炎、感染症、腎毒性のある薬物や化学物質への暴露などが挙げられます。また、ペルシャやメインクーンなどの特定の品種では、遺伝的に腎臓病を発症しやすい傾向があります。

病期分類(IRIS分類)

国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)による分類では、血中クレアチニン値と臨床症状に基づいて4つのステージに分類されます。ステージ1では血中クレアチニン値が1.6mg/dl未満で症状はほとんどありません。ステージ2では1.6-2.8mg/dl、ステージ3では2.9-5.0mg/dl、ステージ4では5.0mg/dl以上となり、それぞれ症状の重篤度も増加します。

診断方法

慢性腎臓病の診断には、血液検査、尿検査、画像診断が用いられます。血液検査では血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、リン、カリウムなどの値を測定し、腎機能の評価を行います。近年では、より早期の腎機能低下を検出できるSDMA(対称性ジメチルアルギニン)検査も利用されています。

尿検査では尿比重、蛋白尿、細菌感染の有無を確認し、超音波検査やレントゲン検査により腎臓の形態学的変化を評価します。

治療法と管理

慢性腎臓病の治療は、① 腎機能の保護と進行抑制、② 症状の緩和と生活の質の向上、③ 合併症の予防と治療、の3つの柱で構成されます。治療法は病期により異なりますが、早期からの適切な管理により、猫の寿命と生活の質を大幅に改善することが可能です。

食事療法

慢性腎臓病の管理において、食事療法は最も重要な治療法の一つです。腎臓病用の療法食は、蛋白質とリンの制限、ナトリウムの調整、オメガ3脂肪酸の強化などが行われており、腎機能の保護と症状の改善に効果的です。

水分摂取量の確保も極めて重要で、ウェットフードの使用や複数箇所への給水器設置、水温の調整などにより水分摂取を促進します。

薬物療法

進行期の慢性腎臓病では、症状や合併症に応じて様々な薬物療法を行います。ACE阻害薬やARBは腎保護作用があり、進行抑制に効果的です。リン吸着剤は高リン血症の管理に、制酸剤は胃酸過多による嘔吐の軽減に使用されます。

重度の症状がある場合には、皮下輸液による脱水の改善、造血ホルモン剤による貧血の治療、降圧薬による高血圧の管理なども行われます。

定期的なモニタリング

慢性腎臓病の猫では、定期的な血液検査と尿検査により病態の変化を監視することが重要です。初期段階では3〜6ヶ月ごと、進行期では1〜3ヶ月ごとの検査が推奨されます。また、血圧測定や体重管理も重要な指標となります。

予防と早期発見

慢性腎臓病の完全な予防は困難ですが、リスクを軽減する方法があります。適切な水分摂取の維持、バランスの取れた食事、定期的な健康診断、ストレスの軽減、適正体重の維持などが重要です。

札幌市にあるちゅら動物病院では、年1回以上の健康診断を推奨しており、血液検査等により早期発見に努めています。また、当院ではシニア向けに、より充実した健康診断のパックもご用意しております。

多飲多尿、食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状が見られた場合は、速やかに動物病院を受診することが重要です。お困りの際はお気軽にご相談、ご来院ください。

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