おしりから出血!?血尿!?ハリネズミの子宮疾患①「子宮内膜ポリープ」

※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

ヨツユビハリネズミ(4歳5ヶ月齢、雌)が血尿の症状で来院されました。子宮疾患や膀胱炎を疑い、尿検査(自然排尿)、麻酔下にて血液検査、レントゲン検査、超音波検査を行いました。検査の結果、子宮疾患による出血である可能性が高かったため、飼い主様と相談し手術にて卵巣と子宮を摘出することになりました。術後は出血もなく、術後2週間で治療終了となりました。

ハリネズミの血尿について

ハリネズミの血尿は時折認められ、膀胱炎などの尿路疾患や子宮疾患(雌)の可能性が高いです。ハリネズミは夜行性のため、どこからの出血か見分けるのが困難なことがありますが、注意深く観察することで見分けます。血尿が重度になると、貧血になっていることがあり注意が必要です。ハリネズミは、すぐに針を立てて防御態勢をとってしまい、検査や治療が困難なことが多い動物種です。そのため、麻酔下で検査や処置を行うことが多く、麻酔をかけるメリットとデメリットを考慮して検査や治療に進みます。当院では麻酔をかける際は一度の麻酔で終わらせたいので、様々な検査を同時に行うことが多いです。それらの検査結果から総合的に判断し、診断に至ります。

▲前から見た様子では特に異常は認められません。ペットシーツには血液が点々とついています

▲出血跡です。粘土の高い血液がペットシーツに出ています。粘土が高い出血跡なので、尿で薄まる尿路からの出血である可能性は低いです。

▲おなか側からの外観です。陰部やお尻周りに血液が付着しています。

▲おなかを軽く圧迫すると、陰部から血尿が出てきました。これにより、血便ではないことがわかりましたが、尿路からの出血か子宮からの出血かはまだ断定できません。

▲矢印で示す陰影が、子宮である可能性が高いと感じました。ハリネズミはほかの動物と異なり、針によって陰影が見にくいです。

▲矢印で示すところは膀胱です。超音波検査場では異常を認めませんでした。

▲矢印で示す部分は何かしらのできものである可能性が高く、位置的に子宮の腫大が疑われました。

血液検査では軽度の貧血と尿素窒素の上昇が認められました。

各種検査により、子宮疾患による出血であることが可能性で高いため治療の第一選択肢である手術による子宮卵巣の摘出となりました。

▲膀胱です。見た目には特に異常は認められません。

▲腫大した子宮です。正常は5~6㎜であることが多いですが、この患者の子宮は1cm以上に腫大していました。

摘出した卵巣と子宮は、病理検査という検査に出します。病理検査とは見た目ではわからない異常や癌なのかそうではないのか、取り切れているのか、転移の可能性はないのか など調べる検査です。この検査をしておかないと、後々トラブルが出てきたときの対応に苦慮することになったり、予後の判定ができないためトラブルを未然に防ぎにくくなります。

臨床診断は「子宮疾患による出血」
病理診断は「子宮内膜ポリープおよび子宮内出血」

2日間入院治療し、出血の有無と体調改善を確認しました。ハリネズミではよくあることですが入院中は環境の変化からごはんを食べなくなることがあります。その場合は、早めに退院として、自宅管理に移行します。この患者さんも帰宅後はしっかりご飯を食べてくれて、処方した内服(抗生剤や鎮痛剤)も飲めていました、もちろん、血尿はありませんでした。退院後数日での再診において手術の傷は問題ありませんでした。術後2週間後でも問題がなく。病理検査結果も良性のできものであったため、普段の生活に戻って経過観察となりました。

ハリネズミの子宮内膜ポリープ について

子宮内膜ポリープは、ハリネズミにおいては比較的多く発生する非腫瘍性の良性病変です。年齢は3~5歳以降に認められることが多く、出血を伴うことがあります。治療としては子宮卵巣摘出術が有効とされています。

症状

出血を伴う場合、陰部からの出血で飼い主様が気付くことが多いですが、出血を伴わない場合の検出は困難な場合が多いです。

診断

尿検査、レントゲン検査、超音波検査など

治療

手術による子宮卵巣の摘出

予防

早期の避妊手術

※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。

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