セキセイインコの尾脂腺腺腫(初診時)

尾羽の付け根にできもの!インコの皮膚腫瘍③セキセイインコの尾脂腺腺腫

※手術画像があります。血液などが写ることがありますから苦手な方は閲覧しないでください。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。

概要

セキセイインコ(4歳4か月齢)が「嘴に血のようなものが付いており、羽をむしっている。」とのことで来院されました。触診時に尾脂腺部(尾羽の付け根あたり)に1㎝ほどの出血した腫瘤を認めました。腫瘤の詳細を調べるため、電気メス(電気の力を使って組織を切開したり止血したりする手術器具)を用い腫瘤の摘出手術を行いました。摘出した組織を病理検査に提出した結果、尾脂腺腺腫という良性腫瘍でした。手術後は自咬による出血もなく、皮膚もきれいになったため、治療終了となりました。

鳥の皮膚腫瘤について

皮膚腫瘤は高齢の鳥にできやすい疾患です。大別して非腫瘍性(炎症や感染から起こるもの)と、腫瘍性に分かれます。特徴的なものは外見から診断されることもありますが、多くの場合、腫瘤に針を刺して取れた細胞を調べる針生検や、腫瘤を切除、摘出して調べる病理組織検査をしなければ、腫瘤の詳細を明らかにすることはできません。非腫瘍性腫瘤であれば内服で治ることもありますが、腫瘍性の場合内服では治療困難であることが多いです。特に悪性の腫瘍の場合は組織の浸潤性(がん細胞が周りの組織を壊しながら拡大していくこと)が強く、他の臓器への転移が見られる場合があるため早期の摘出が重要です。良性の腫瘍であっても、日常生活に支障をきたすようなら、切除することが推奨されます。

初診時:尾脂腺部の腫瘤

▲初診時の画像です。尾脂腺部の腫瘤の表面は血が固まり、カサブタになっています

摘出した腫瘤(約1cm)

▲摘出した腫瘤です。1cmほどの大きさでした

臨床診断は「皮膚腫瘍」
病理診断は「尾脂腺腺腫」

術後1か月の外観

▲術後1か月のセキセイインコの外観です

術後1か月:尾羽の付け根の状態

▲手術1か月後の尾羽の付け根の様子です。皮膚もきれいになったため、治療終了です

鳥の尾脂腺腺腫について

尾脂腺は鳥類の尾羽の付け根に位置する分泌腺です。分泌物を羽づくろいの際に羽に塗ってはっ水性を持たせたり、羽を整えたりします。尾脂腺の形状や大きさは鳥種により異なり、尾脂腺をもたない鳥種もいます。尾脂腺は小型インコにおいて腫瘤が生じやすい部位であり、その異常はセキセイインコで多くみられます。尾脂腺由来の腫瘍は、肉眼的な良悪性の鑑別は困難なため、病理組織検査が必要です。良性腫瘍は、生活に支障がなければ経過観察となりますが、状況により摘出します。悪性腫瘍は早期摘出が重要です。摘出が難しい部位に発生した悪性腫瘍は、腫瘍の種類に応じ、抗がん剤や放射線療法を検討しながら治療をすすめていきます。

原因

原因は特定できていません

症状

皮膚の腫瘤、自咬による出血、自咬部位の感染や痛みによる食欲元気の低下など。ただし、腫瘤が大きく成長しても全く気にしない鳥もいます

検査

針生検、腫瘍の切除、生検、超音波検査、X線検査、CT検査など

治療

経過観察、場合により外科摘出

予防

予防は特にありません。定期的な健康診断による早期発見が大切です

文責:飯島杏香 獣医師
監修:清野伸隆 獣医師 院長

※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。

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