嚙まれて出血。アカハナグマの外傷
※本コラムでは出血時の画像があります。苦手な方は閲覧をお控えください。
※このコラムの内容は、この患者さんでのケースであり、一般的ではないことも記載されています。個体により状況は異なりますので飼われている伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。
※この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。
概要
アカハナグマ(2ヶ月齢 未避妊雌)が「同居の動物に鼻先をかまれてしまった。」とのことで来院しました。来院時には鼻先からの出血がひどく、貧血、もしくはショック状態なのか歯茎の色が薄くなっていました。麻酔をかけて不動化(動かないようにすること)した後、止血処置を行うと同時に採血を行いました。血液検査の結果、貧血を起こしていましたが、出血は大分抑えられたため注射と内服で経過を観察。数日後の再診では出血も認められず、体調も改善。およそ2週間後の血液検査でも貧血は認めず、鼻も治癒していたため治療終了としました。
アカハナグマについて
アカハナグマは、食肉目アライグマ科の動物で、豚のような鼻と尻尾が長いのが特徴です。雑食性で野生化では主に果実、小動物などを食べて生活していますが、伴侶動物として一緒に生活する場合はドッグフードやキャットフードを中心に与えることが多いです。近年、伴侶動物として飼われている方が増えてきていますが、情報が非常に少ないため、必要な栄養素についても未知な部分が多いのが現状です。
鼻先からの出血が強かったため、すぐにお預かりして酸素吸入を行いました(わかりにくいですが、酸素ボックスの中での画像です)
酸素を十分に吸わせた後の画像です。鼻先には血餅(血の塊)が付いています。鼻先でフンフン臭いをかぐ動物なので、出血が止まってもこすれて再出血してしまいます
歯茎の色が薄くなっているため、貧血が疑わしい状態でした
麻酔をかけて止血処置を施したところです。この段階ではまだ血液検査の結果が出ていませんでしたが、貧血が疑わしかったため、短時間で終わらせるように心がけます 麻酔からの覚醒は問題ありませんでした。 血液検査の結果、貧血があることわかりました。 抗生物質、止血剤などの内服をお渡しし、自宅治療を行います。
数日後の再診では出血を認めず、元気食欲も問題ありませんでした。メラニン色素は欠損してしまいましたが良好です
およそ2週間後の画像です。鼻先に少し潰瘍がありますが、体調に問題は無く、この後治癒すると思われました。血液検査では貧血も認めなかったため、治療終了としました
鼻先の外傷についてもっとくわしく!
鼻先の外傷、出血はなかなか治癒するのに時間がかかることが多いです。その理由としては、動物にとって鼻先は、臭いをかぐときにぶつけたり、ご飯を食べるときに当たったり、水を飲むときにこすれたりと、何かと刺激となってしまうことが多い場所だからです。治療としても、鼻先は皮膚で覆うことや縫合が困難なため、出血点を覆うことが難しい部位です。
原因
好奇心や臭いをかぐために鼻を近づけたときに咬まれる、傷つける。事故 など
症状
鼻を気にする、こする。出血、鼻汁など
検査
出血が強い場合は血液検査(貧血有無の確認、血液凝固系の確認)など
治療
止血処置。可能なら皮膚縫合処置
予防
遊ばせるときや散歩中など配慮する
※伴侶動物の症状、状態には個体差があります。伴侶動物で気になることがあれば、かかりつけにご相談されることをお勧めします。このコラムの内容閲覧により生じた一切のトラブルについて当院では責任を負いかねます。
※当院では、飼い主様と伴侶動物の協力のもと、多くの伴侶動物ができる限り疾患に罹患しないよう情報を共有するため、個人情報に配慮したうえで伴侶動物の疾患の報告を行っています。改めて、この度、HPへの掲載にご協力いただいた飼い主様と伴侶動物に感謝申し上げます。引き続きこの子の健康維持に向けて尽力してまいります。