犬の涙やけ(流涙症)

犬の流涙症とは

犬の涙やけを引き起こす疾患として流涙症があります。流涙症では眼の下の毛の色つきや、目ヤニ、時には眼の充血や、白色~緑色の膿が混じった分泌物、涙でただれることによる眼の周辺の皮膚炎などがみられることもあります。

流涙症は①涙の排出路である涙道(涙点、鼻涙管)の異常、②眼の炎症による涙の過剰な分泌により引き起こされます。

涙点と鼻涙管

犬は眼を乾燥から守るために常に少量の涙を分泌し、表面を潤しています。分泌された涙は涙点とよばれる上の瞼と下の瞼に1つずつ空いた穴に集められ、涙嚢(るいのう)とよばれる空洞、鼻涙管とよばれる眼と鼻腔を繋ぐ細い管を通り鼻腔へと流れていきます。眼→涙点→涙嚢→鼻涙管→鼻腔で構成される涙の流れる経路を涙道とよびます。

流涙症の原因

涙道の異常

涙の流出路である涙道の異常は①先天的な閉塞や狭窄、②異物などによる閉塞により引き起こされます。

①でもっともよくみられるものとして涙点の閉塞が挙げられます。この異常は先天的であり、生まれたときにはすでに持っているものですが、生後2カ月齢を超えるまでは流涙症の症状がみられないといわれています。涙点の狭窄や、涙鼻管の狭窄や閉塞がみられることもあります。

②では植物の種子や茎などが原因となります。これらの異物は涙嚢や鼻涙管を閉塞させ流涙症を引き起こすだけではなく、炎症を引き起こすことで細菌の二次感染による膿などの分泌物の原因にもなります。

また、腫瘍や膿瘍などによる涙道の圧迫でも流涙症がみられることがあります。

涙の分泌量が増える疾患

白目や黒目の表面を角膜、瞼や瞼の裏側を結膜とよびますが、これらの炎症(角膜炎、結膜炎)による刺激で涙の分泌量が増加し流涙症がみられることがあります。

角膜炎や結膜炎を引き起こす原因には①アレルギー、②外傷、③異物や逆さまつ毛がよくみられます。アレルギー性の角結膜炎はアトピー性皮膚炎の罹患と関係があり、外傷性の角結膜炎は喧嘩による咬傷や鋭利な物との接触で引き起こされます。植物や砂などの異物、瞼の裏側から生えている逆さまつ毛は、角膜や結膜を刺激し炎症を引き起こします。

①~③の原因と比較するとまれではありますが、眼の表面に寄生する東洋眼虫や、眼球周辺の腫瘍などでも流涙症がみられる可能性があります。

流涙症の検査、治療

流涙症の検査

流涙症を検査するためには、フルオレセイン排出試験や鼻涙管のカニュレーションをおこないます。フルオレセインは蛍光色の染色液であり、生体にとって比較的安全なため、角膜の検査などに使用されます。フルオレセイン排出試験では、フルオレセインを角膜や結膜に点眼することで、涙と混じった染色液が眼→涙点→涙嚢→鼻涙管→鼻腔の経路を流れることを確認します。涙道の狭窄や閉塞がみられない場合、数分後に鼻孔や鼻腔の延長にある咽頭(のどぼとけがある部分)に染色液が観察されます。

鼻涙管のカニュレーションでは、涙点から細い管を挿入することで狭窄や閉塞を検査します。

流涙症の治療

涙道に狭窄や閉塞がみつかった場合には、涙道の狭窄や閉塞の原因となっている異物の洗浄や、外科的な涙道の開通をおこないます。涙道に関係する外科手術は専門性が高く、大学病院などの二次診療施設へ紹介され、手術をおこなう場合もあります。

角膜や結膜の炎症が原因の流涙症では、抗生物質や抗炎症剤の点眼や、逆さまつ毛や異物の摘出をおこないます。

白田先生

獣医師ライター

獣医師。14年間一般の動物病院に勤務しました。そのあと自分の病院を開業して今年でちょうど10年になります。私もこれからもっと成長していきたいです。得意な分野は消化器、内分泌、眼科です。

※本ライターによる執筆は本ライターに帰属するものであり、その正確性や内容に関してちゅら動物病院がなんら保証するものではありません。

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犬の涙やけの取り方、クリーナー、ワセリンは効果的?

取っても取っても再発する涙焼け…おうちでできるケアとしてはやはり清潔に保つことです。とはいえ、原因によって対処法が異なりますので、まずはかかりつけ医にご相談されてからおうちでの対処を行いましょう。ドッグフードを変えることでよくなる事例も散見されるようです。

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