犬の去勢手術

去勢手術を行う時期

犬が性成熟期を迎えるだいたい生後7ヵ月頃に去勢手術を行います。オスはメスと違って発情期がありません。物理的には、生後2~3ヵ月から去勢手術は可能ですが、幼齢すぎるうちに去勢手術を行うと肥満傾向が高まる可能性があるため、それほど急ぐ必要はないでしょう。永久歯が生えそろって乳歯が残っている場合に、抜歯処置に全身麻酔が必要なので、去勢手術を一緒に行うということもよくあります。

去勢手術の利点

攻撃性を低下させます

オス同士のケンカが起きづらくなります。

マーキングやマウンティングが減ります

マーキングもマウンティングも減りますが、最後は家族の中で犬がどのような状況にあるかによって変わってきます。きちんとしつけをしましょう。

メスの発情期のにおいがしても、反応しなくなります

去勢してないと10Km離れていても、発情しているメスに反応します。

ストレスが軽減します

いつも縄張りなどを考えてイライラしているのがなくなります。

肛門周囲腺腫の発生率を低下させます

肛門周囲腺腫は肛門の周囲と尾根部によくみられ、硬い結節として発生する腫瘍です。高齢の去勢していない犬にみられ、悪性と良性があります。

前立腺に起こる病気の発生率を低下させます

去勢手術で精巣を取り除くと前立腺が委縮するので、前立腺肥大症や命にも関わる前立腺腫瘍がほとんど発生しなくなります。

会陰ヘルニアの発生率を低下させます

高齢のオスでは、会陰部の筋肉が薄くなり、筋肉と筋肉の間が隙間が開いてしまうことがよく見られます。その隙間から小腸、膀胱や脂肪が出て、肛門の周囲の腫れが見られることを会陰ヘルニアといいます。

精巣腫瘍を予防できます

去勢手術で精巣を摘出するため、腫瘍にはなりません。

去勢手術の欠点

肥満

去勢手術前よりも代謝エネルギー量が減るため、太りやすくなります。

仔犬を残せなくなります

去勢手術をすると仔犬を残せなくなります。仔犬を考える場合には、去勢手術を受けさせないという選択をとることもあります。

去勢手術はどんな手術なのか

手術前

身体検査、血液検査、レントゲン検査などを行います。結果から全身麻酔をかけられる状態かを確認します。

手術当日

朝ごはんを抜いた絶食の状態で動物病院へ行きます。嘔吐による窒息や誤嚥性肺炎を防ぐために絶食が必要です。
1、全身麻酔(セボフルラン、イソフルランなど)で眠らせます。
2、陰茎の皮膚をバリカンで毛を剃り、消毒します。
3、手術の器具をひろげます。
4、陰茎の付け根の皮膚に3〜5cm 切ります。(犬のサイズによって切る大きさが違います)
5、陰嚢から精巣を切開創まで手で移動させ、摘出します。
精管と血管をしっかり止めないと命に関わります。
6、陰茎の根元を糸で縫って全身麻酔を覚まして終了です。
手術時間は30分ぐらいです。

入院

動物病院によって当日帰りだったり入院数日と様々です。個人的な考えを言いますと、犬は手術した当日は痛がるので入院した方がよいと思います。

飲み薬

抗生物質を処方しますが、皮下注射を打って2週間薬は出さないか、毎日1回内服薬を飲むなど動物病院によって違います。

抜糸

手術から10日間程度で抜糸します。お風呂はもう2日くらいしてから、入りましょう。

カラーと手術衣について

手術の傷を舐めてほしくないので、カラーまたは手術衣をつけます。カラーは首の周りにつけますが、犬によっては上手く水やごはんを食べられないことがあります。水やごはんのときにカラーをはずして、水やごはんが終わったり、途中でも傷を舐めそうになったら再び装着します。手術衣は、体をすっぽり包んだ洋服で手術の傷をいじれなくなってます。しかし陰茎が近いので手術衣がずれて傷を舐めることができたり、おしっこをすると汚れることがよくあります。

潜在精巣(陰睾)について

オス犬では精巣下降が起こります

オス犬では生後3ヶ月齢くらいで精巣が、おなかの中(腎臓のそば)から太ももの付け根にあるソケイ菅を通過して皮下に出て、さらに移動して陰嚢におさまります。

潜在精巣(陰睾)とは

潜在精巣は精巣下降が陰嚢への移動の途中で終わるか、まったく移動しないときに起こります。精巣はお腹の中か、ソケイ菅から陰嚢の皮膚の下にとどまっています。

潜在精巣に伴う精巣腫瘍のリスク

体温による影響がある潜在精巣は、正常な精巣の3〜14倍腫瘍になります。

潜在精巣と繁殖

片側潜在精巣は仔犬を残すことができます。しかし潜在精巣は遺伝疾患ですので、繁殖させるのはやめましょう。

まとめ

去勢の時期や潜在精巣についてこまったことがありましたら、当院までお気軽にご相談ください。

白田先生

獣医師ライター

獣医師。14年間一般の動物病院に勤務しました。そのあと自分の病院を開業して今年でちょうど10年になります。私もこれからもっと成長していきたいです。得意な分野は消化器、内分泌、眼科です。

※本ライターによる執筆は本ライターに帰属するものであり、その正確性や内容に関してちゅら動物病院がなんら保証するものではありません。

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