犬の避妊手術

犬のメスは一般的に、生後6~12ヶ月齢頃に、はじめての発情期(ヒート)を迎えて妊娠できる体になっていきます。高齢になり発情期が来なくなり、うちの犬は発情期からあがったとよく言うヒトがいますが間違えてます。犬の発情期は一生ものなので、卵巣や子宮に何か問題がなければ、生涯発情が続きます。

避妊手術はどれくらいで行うの?

5ヶ月齢〜1歳5ヶ月齢くらいに受けるのが望ましいです。発情期を0〜2回まで迎えるうちに手術した方が、将来高齢になって乳腺腫瘍になる可能性が低いと言われているためです。

避妊手術の利点

乳腺腫瘍の発生率低下

避妊手術をしてない犬の乳腺腫瘍発生率を100%とした場合、初回発情期を迎えないうちに避妊手術をしたら乳腺腫瘍の発生率は0.5%、1〜2回目の発情期を迎えた犬で避妊手術をしたら発生率は26%にさがります。3回目以降の発情期に避妊手術をした犬は、避妊手術をしてない犬と乳腺腫瘍の発生率に差がありません。

卵巣、子宮の病気が防げます

卵巣嚢腫、顆粒膜細胞腫、子宮水腫、子宮蓄膿症など卵巣、子宮に起こる病気が避妊手術で防げます。

発情期に起こる精神的、肉体的変化がなくなります

発情期に、ぬいぐるみを使って腰を使ったり、ぬいぐるみで子育てを始め、飼い主に凶暴になったりします。また肉体的には発情出血や乳汁分泌(おっぱいが滲み出る)が起こります。避妊手術をすれば、ほとんどなくなります。

避妊手術の欠点

肥満

手術後、食欲が多くなったり、あまり動かず代謝カロリー量の減少が見られ肥満になりやすくなります。体重の増加が見られる場合には、フードの量を調整したり、フードを減量用に切り変えたりするといいでしょう。

尿失禁の可能性

手術後、数年して尿失禁が起こることがあります。とくに中大型に見られます。避妊手術により女性ホルモンが減少し、膀胱括約筋の収縮力が低下するためと考えられています。薬を飲むことでよくなります。

仔犬が生めなくなります

避妊手術をすると妊娠、出産ができなくなります。仔犬を生ませたいと考える場合には、避妊手術を受けさせないという選択をとることもあります。

避妊手術はどんな手術なのか

最先端の動物病院では開腹せずに腹腔鏡で避妊手術を行いますが、麻酔時間が長時間かかり、器具自体も高価なため、普及はしていません。また卵巣摘出術だけの手術を行う動物病院もありますが、ここでは一般的な卵巣子宮摘出術を紹介しておきます。

手術前

身体検査、血液検査、レントゲン検査などを行います。結果から全身麻酔をかけられる状態かを確認します。

手術当日

朝ごはんを抜いた絶食の状態で動物病院へ行きます。嘔吐による窒息や誤嚥性肺炎を防ぐために絶食が必要です。
1、全身麻酔(セボフルラン、イソフルランなど)で眠らせます。
2、お腹をバリカンで毛を剃り、消毒します。
3、手術の器具をひろげます。
4、お腹の真ん中を3〜5cm くらい切ります。
5、卵巣と子宮を摘出します。
卵巣と子宮の位置で、しっかり止血を行わないと命に関わります。
6、お腹を糸で縫って全身麻酔を覚まして終了です。
手術時間は30分~1時間ぐらいです。

入院

動物病院によって当日帰りだったり入院数日と様々です。個人的な考えを言いますと、犬は手術した当日は痛がるので入院した方がよいと思います。

飲み薬

抗生物質を処方しますが、皮下注射を打って2週間薬は出さないか、毎日1回内服薬を飲むなど動物病院によって違います。

抜糸

手術から10日間程度で抜糸します。お風呂はもう2日くらいしてから、入りましょう。

カラーと手術衣について

手術のお腹の傷を舐めてほしくないので、カラーまたは手術衣をつけます。カラーは首の周りにつけますが、犬によっては上手く水やごはんを食べられないことがあります。水やごはんのときにカラーをはずして、水やごはんが終わったり、途中でも傷を舐めそうになったら再び装着します。手術衣は、体をすっぽり包んだ洋服でお腹の傷をいじれなくなってます。手術衣がずれて、おしっこがついて汚れることがあります。

薬による避妊もあります

犬の注射薬でプロゲステロンが販売されています。発情期を止めてくれます。合成プロゲステロンであるクロルマジノン酢酸エステルをシリコンエラストマーと混合したインプラント剤があります。1回の処置により最長2年間発情を抑制することが可能です。また摘出することにより1〜8ヵ月後に発情を回帰し妊娠可能な状態に戻すことができます。しかしこの薬は、長く使うと子宮の病気になる可能性が高いです。獣医師としてはおすすめできません。

まとめ

迷うことが多い避妊手術、こまったことがありましたら動物病院におたずねください。

白田先生

獣医師ライター

獣医師。14年間一般の動物病院に勤務しました。そのあと自分の病院を開業して今年でちょうど10年になります。私もこれからもっと成長していきたいです。得意な分野は消化器、内分泌、眼科です。

※本ライターによる執筆は本ライターに帰属するものであり、その正確性や内容に関してちゅら動物病院がなんら保証するものではありません。

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