犬の腎臓病(腎不全・尿毒症)

腎臓病の概要

腎臓は血液中の老廃物をろ過し、尿として体の外に排出する役割を担っています。腎臓の機能が下がっている状態を腎臓病といい、急性のもの(急性腎障害)と慢性のもの(慢性腎臓病)に大別されます。

急性腎障害

急性腎障害は、数時間から数日のうちにあっという間に病態が進行し、命に危険を及ぼすことがあります。排尿量の減少、排尿の消失、脱水、嘔吐、食欲不振などが見られます。

「おしっこが出ない」ことが原因となるケースが多く、尿路結石がある場合は、石が詰まってしまって急性腎障害を引き起こす可能性が高くなるので、注意が必要です。

腎臓病の原因

急性腎障害の原因の多くは、尿路閉塞によるものです。その中でも、よくあるのは尿路結石による閉塞で、尿が排出できなくなることにより腎臓に負荷がかかり、症状が発現します。腫瘍塊による閉塞や炎症による尿路狭窄などでも引き起こされます。また、ユリ中毒に代表される様々な中毒により起こることもあります。

腎臓病の症状

急性腎障害の症状は排尿の減少もしくは消失(尿路閉塞もしくは尿産生量の低下)、脱水、嘔吐、食欲不振などです。体内の毒素を排出できないため、病態が進行してくると痙攣や昏睡、死に至ります。

腎臓病の検査・診断

腎臓病の治療

尿路閉塞の場合、閉塞物を除去後、腎保護のため点滴を行います。また、必要な薬剤の投薬を行います。尿産生量低下の場合は、量に注意しつつ腎保護のため点滴を行います。また、必要な薬剤の投薬を行います。

腎臓病の症状

国際的ガイドライン(IRIS慢性腎臓病ステージング)では、腎機能障害の程度により4つのステージに分類しています。第1ステージでは、尿濃縮能の低下や腎臓の形態学的異常を認めるものの、無症状の状態です。第2ステージになると、よく水を飲むようになり、それに伴って尿量も増加しますが、その他の症状が認められず一見、正常のようにも見えます。第3ステージになると食欲の低下、嘔吐、体重減少、貧血など症状が見られるようになります。第4ステージでは尿毒症が強くなり、嘔吐や食欲不振を始め様々な症状が強く現れます。中には痙攣などの神経症状を示すものもあり、大変危険な状態となります。

腎臓病の治療

慢性腎臓病の特効薬はなく、状況に応じて薬物療法、補液療法など様々な治療が行われます。慢性腎臓病と診断された場合には食餌中のタンパク質や塩分を制限する必要があり、早期に治療を開始することが重要です。

予防・治療後の注意点

急性腎障害の場合

急性腎障害の場合、早期に適切な治療を施すことができれば腎臓への損傷は一時的であることが多いですが、一方、損傷が深刻な場合、死に至ることが多い疾患です。急性腎障害から脱却した後に慢性腎臓病に移行することもあります。

慢性腎臓病の場合

慢性腎臓病は数か月以上にわたって徐々に腎臓の機能が低下した状態で、このように一度低下した腎臓の機能は回復しないとされています。日頃から飲水量や尿量、尿色を観察したり、健康診断などで早期発見、対策することが重要です。多くは老化現象のひとつとして現れてくるので、中年齢からの注意が必要です。また、急性腎障害の治癒後に慢性腎臓病に移行することもあります。

健康診断などで早期発見できることが最良ですが、よく観察することで比較的早く発見することも可能です。よく水を飲み、尿の量も増えた場合、腎臓病の初期である可能性があります。この後、病態が進むと、食欲にムラが見られる、時々嘔吐する、などの症状が見られるようになります。

腎臓病の原因

慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎などにより腎臓の損傷は次第に広がり慢性化します。また、老化現象のひとつとして、腎機能は少しずつ衰えてくるため、中年齢以降しばしばみられます。

白田先生

獣医師ライター

獣医師。14年間一般の動物病院に勤務しました。そのあと自分の病院を開業して今年でちょうど10年になります。私もこれからもっと成長していきたいです。得意な分野は消化器、内分泌、眼科です。

※本ライターによる執筆は本ライターに帰属するものであり、その正確性や内容に関してちゅら動物病院がなんら保証するものではありません。

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ステージ、余命などは

腎臓病はステージ1からステージ4まで、4つのステージに分類されています。ステージの数値が小さい方が症状が軽く、重くなるにつれステージの数字も大きくなっていきます。ステージ1では臨床症状がないことが多く、飼い主さんも以上を見つけられないことが多いです。この段階で「残存腎機能(残腎機能)」がおよそ33%程度とされています。残腎機能は人間で言う腹膜透析などで対応するもので、この残腎機能をしっかりと残すことが余命に影響していきます。ステージ2になると残腎機能は25%、ステージ3で10%未満、ステージ4では5%未満となり、生命維持のためにかなり積極的な治療を必要とします。ステージ2の段階で、多飲多尿等がみられることがありますので、いつもよりおしっこが多いな、水の減りが早いなと思ったら獣医さんに受診されることを検討してみてください。

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