犬の動脈管開存症

犬でよくみられる心臓の先天性疾患

動脈管開存症は犬でよくみられる心臓の先天性疾患のひとつです。先天性疾患とは生まれたときから罹患している疾患をいいます。
犬でよくみられる心臓の先天性疾患には動脈管開存症の他に、肺動脈狭窄、大動脈狭窄が知られていますが、これらは88.14%で単一の疾患として、11.86%で複合的に罹患します。複合的な心臓の先天性疾患は、予後を悪化させると報告されています。
動脈管開存症は若齢の雌犬で多く診断され、また小型犬ではリスクが高いとされています。


心臓の動脈管とは

母犬のお腹の中にいる仔犬は臍の尾と胎盤を通じて酸素や栄養をやり取りしています。そのため、胎児の肺などの一部の臓器は出生後に初めて本格的に機能します。
心臓には①全身から戻ってきた酸素の乏しい血液を、心臓を経由して肺へ送る、大静脈→右心→肺動脈→肺という経路と、②肺から戻ってきた酸素が豊富な血液を全身に送る肺→肺静脈→左心→大動脈→全身という経路の2つの大きな血液の流れが存在します。
胎児期の犬の肺はほとんど機能していないため出生後ほど血流を必要としていません。肺動脈と肺静脈をつなぐ短い血管である動脈管とよばれる組織が存在しており、血液の80%近くがバイパスされます。
出生した犬では肺に十分な血液を送る必要があるため、動脈管は生まれて2~3日で自然に閉鎖しますが、動脈管開存症の犬では動脈管が塞がれず機能し続けます。
肺から得た酸素の豊富な血液が全身に送られず、また心臓内での血流の留まりによって運動不耐性や呼吸器症状などがみられます。


動脈管開存症がよくみられる犬

チワワ、プードル、ピジョンフリーゼ、マルチーズ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどの小型犬でよくみられる疾患です。
そのほか、ジャーマンシェパード、シェットランドシープドック、コリーなどの中大型犬でも当疾患はみられます。


動脈管開存症の症状

動脈管開存症では散歩を嫌がる、疲れやすい、いつも寝ているなどの運動不耐性、咳や浅く速い呼吸、苦しそうな呼吸などの呼吸器症状などが引き起こされます。


アイゼンメンジャー症候群

一般的な動脈管開存症では肺静脈→動脈管→肺動脈の順に血流が流れていきます。これは①肺静脈が接続する左心は全身に血液を流す役割があるため、②肺動脈が接続する右心よりも血圧が高いためです。
肺高血圧症などを併発する犬では②肺動脈から肺へ血流を送るために高い圧力が必要になり、①肺静脈と血圧差が逆転することがあります。この場合、肺動脈→動脈管→肺静脈の順に血液が流れる右左短絡が引き起こされ、アイゼンメンジャー症候群とよばれます。
アイゼンメンジャー症候群では肺高血圧症が原因となる肺動脈の高血圧を、動脈管を介して肺静脈に逃がしている状態になるため、後述する外科的な動脈管の閉鎖をおこなうことでさらなる肺血圧の上昇による重篤な肺水腫などの致死的な症状を引き起こします。アイゼンメンジャー症候群の犬では動脈管の外科的な閉鎖は禁忌とされています。


動脈管開存症の治療

外科的療法

動脈管開存症の根治的な治療法として、外科的な動脈管の閉鎖をおこないます。動脈管の閉鎖は心臓の外側から動脈管を糸で縛ってしまう方法と、血管を通じて動脈管にコイルを詰め、血流を止める方法があります。


外科的療法をおこなった犬の予後

動脈管の外科的結紮をおこなった1年後の犬の生存率は92%、2年後の生存率は87%であると報告されています。他の心疾患を併発していない犬の余命を表す生存期間中央値は11.5年であり、長期間の生存が期待できます。一方、心疾患の併発がみられる場合は、予後が短くなると述べられています。

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